札商ビル接収・戦後の苦難

進駐軍憲兵隊が占拠
 札幌商工会議所が昭和9年に建設した札商ビル(現在の札幌グランドホテルの場所)は、戦争遂行協力のため商工会議所に代わって組織された北海道商工経済会が、本部(昭和18年~戦後)として使用した。
 会頭には小樽の山本厚三が選出され、札幌商工会議所会頭の新田啓二郎は、理事・総務部長取扱に就任した。
 山本は東京高商卒で外交官志望だったが小樽倉庫社長山本久右衛門の養子となり、小樽を本拠に倉庫、船舶業、漁業、農場経営など実業界で幅広く活躍する手腕を買われた。そのうえ小樽商工会議所会頭(大正6年~同10年)、連続六期25年の代議士など名実ともに本道のリーダーだった。
 札幌でなく小樽から会頭が選出されたのは、貴族院議員の選挙人(高額納税者)が、小樽・函館に集中していたように、経済界そのものの実力が札幌を小樽が上回っていたことが背景にある。しかし、この実力も戦後札幌が急速に力をつけ、札幌主導の形が確立された。

 戦後は、敗戦という国難とともにやってきた。
 マッカーサー元帥の厚木到着とともに連合軍最高司令官による日本の占領体制が整えられた。北海道には、東京への駐留と相前後して、20年10月4日、パーネル少将指揮の米第八軍麾下第九軍団第77師団の約6,000人が函館港から、本道進駐米軍最高司令官ウィダー少将、第77師団長ブルース少将指揮の約8,000人の将兵が10月5日小樽港から進駐した。
 この米軍の進駐で札商ビルは憲兵隊本部として占拠され、札幌で95カ所、全道で235カ所が接収された。
進駐軍
駅前通りを宿舎に向かう進駐軍
札商の事務所流転
 札商ビルには、北海道商工経済会ほか諸団体が入居していたが、進駐軍の本道上陸より一足早く、8月末には先遣隊による占拠、退去命令が出された。札幌商工会議所解散で道商工経済会の職員として働いていた人たちは、わが家から追われる身に敗戦の現実と多難な前途を思うのだった。
 有無を言わせない退去命令は、本店を司令部に接収された拓銀の全役員宅にも及んだ。昭和20年2月に副頭取として着任、後に札幌商工会議所会頭になる広瀬経一宅も「48時間以内に立ち退け」という厳令が出され、警官が見張った。
 「2日目には逃げるようにして南12条西13丁目、とうふ屋の裏の民家の2階を借り受けて引っ越した」(『私の履歴書』)。
 この広瀬経一は、昭和27年懇請されて札幌商工会議所会頭に就任した。「固辞したが、狸小路商店街の人たちが東京まで追いかけて来られ引き受けざるを得なかった」(『同』)と、以来16年会頭を続け、札幌商工会議所の中興の祖となった。
 拓銀は明治40年の札幌商業会議所第一回議員選挙で落選しているが、狸小路商店街の「拓銀はわれわれと関係ない(商業者への貸付残高が極度に少ない理由などで)」と協力を得られなかったためだ。それが広瀬札商会頭実現の先頭に立ったのは、「私は前だれ商法に徹しよう」と愛される拓銀を目指す広瀬拓銀頭取への信頼による。
 進駐軍の拓銀、札商ビルなどの接収は、昭和27年まで続くが、札幌商工会議所はこの間札幌市役所内に設立準備事務局、札幌土建会館、北海道産業会館と転々とし、札商ビルに戻れたのは、進駐軍の接収解除による昭和27年12月だった。
札幌土建会館
札商事務所が入居した札幌土建会館
混乱の中での札商活動
 戦後の社団法人札幌商工会議所の設立総会は、昭和21年9月19日、北海道会議事堂で開かれ第九代会頭に伊藤豊次伊藤組社長・貴族院議員を選出するなど、10月28日設立申請、12月4日認可となった。
 新生札幌商工会議所は、全会員の自主的活動による商工業の改善発達を目指し、14の業種別部会を設けたが、この全会員727企業を紹介する「札幌商工案内」を昭和22年9月に刊行した。
 物価引き下げ運動、主婦の店運動、市会議場での見本市、日用品交換会、走るデパートなど生活がらみの活動が目立った。しかし、昭和24年になると、「びっくり市」を開催、3万人を動員するなど、催しも明るさを増した。

 伊藤豊次会頭は、伊藤組二代目社長で札幌生まれの道産子会頭第一号だが、一社一事業主義をとり、昭和26年には所得で全道トップ、全国8位となった。おごることのない指導者で全道における札幌経済界の位置づけを確固たるものにした。札幌商工会議所の事務所を札幌市役所の間借りから札幌土建会館に移し、自主独歩の新しい本拠としたのも、伊藤会頭の配慮によるものだった。会頭は昭和24年6月までの一期だが、その志は長男の伊藤義郎第十四代札幌商工会議所会頭に引き継がれた。
伊藤豊次
第九代伊藤豊次会頭
広瀬経一
第十一代広瀬経一会頭

12 道商連、北海道銀行の設立

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